また、現場の技術者などに関して、人手不足が深刻化しつつある大手建設企業も大幅に採用人数を増やすとみられる。その他にも、自動車メーカー本体や自動車の部品メーカーなども採用増を予定しているもようだ。さらに運送業界でも、運転手を確保するのが難しくなっており、一部の地域では大型免許を持った人材の奪い合いになっているところもあるという。
◆技術継承者不在に危機感
企業の新卒採用者の増加傾向の背景には、単なる人手不足の他に技術者育成の要請があるとみられる。今まで、わが国の多くの企業は、生き残るためにコストを削減することを最優先課題としてきた。コストを削るために最も手っ取り早い方法は、人員を減らして人件費を削ることだった。
ところが、従業員数を削減したため、世代交代のための技術継承者までいなくなってしまった企業もある。今年からは、それを中・長期的な人員育成のための新卒者で対応する方針に少しずつ変化している。大学の就職担当者などによると、「今年は新卒者にとって“売り手市場”になりつつある」という。
一方、人手不足は経済全体の成長に支障になる可能性がある。わが国の人口減少・少子高齢化の状況を考えれば、今後、必要な労働力を確保することが難しくなるとみられる。既に建設や流通などの一部の産業分野で、労働力が隘路(あいろ)(ボトルネック)になり始めている。企業が必要な人員を確保できないと、活動を続けることが難しくなるし、また、人件費の増加が企業の収益を圧迫することになる。