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元号と西暦「面倒に意味あり」 思想家、内田樹氏に聞く (2/5ページ)

応仁の乱にしても、元禄文化にしても、安政の大獄にしても、元号には固有の時代の空気が封印されています。だから、元号を聞いた瞬間に、その時代の空気が吹き込んでくるというようなことが起こる。元号にはそういう身体感覚を賦活する力があったと思うんです」

 「私の父は明治45年1月生まれです。半年だけの明治人でしたけれど、明治人という理念像を造形して、大正生まれとは違う日本人たるべく身を律していました」

 --とはいえいまや日本人もグーグルを使いアマゾンで注文する。世界はフラット化が進んでいます

 「世界のフラット化と簡単に言いますけれど、それは不可能だと思います。イスラム圏が存在するからです。モロッコからインドネシアに至るイスラム圏は食物や服飾の儀礼と祈りの言語を共有するグローバル共同体です。人種も国も言語も生活文化も異にする人たちが、7世紀から現在まで共同体を形成している。これからはアメリカ基準でグローバルにしますと言われても、そんな手荒な話は聞けないでしょう」

 「内戦が起きる所はだいたい国境が直線のところなんです。中東は、オスマントルコ解体のときに、1916年に英仏露がサイクス=ピコ協定を結んで、列強の利害に基づいて国境線を勝手に引いた。だから、同じ部族が国境で分断されたり、疎遠な社会集団が同国民にさせられたりした。中東の国家は時間をかけて形成された国民国家ではありません。だから、政治単位として脆弱(ぜいじゃく)なんです」

 個人への強制は間違い

 --押しつけは定着しないということですね

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