【スポーツi.】夏のスポーツ大会、競技中に生じた事故責任は誰にあるのか マラソンで考える (2/3ページ)

リオデジャネイロ五輪の女子マラソンで力走する日本の田中智美選手(左)=2016年8月
リオデジャネイロ五輪の女子マラソンで力走する日本の田中智美選手(左)=2016年8月【拡大】

 一方、債務不履行責任を追及する場合には、「原告と被告との間における契約関係(または特別な社会的接触関係)の存在」と「被告の原告に対する契約関係に基づく安全配慮義務の存在」とが必要になる。安全配慮義務は、身近な例でいうと、労働契約において、雇用主(会社)は労働者に対し職場の安全に配慮すべき義務を負っているのがこれである。判例ではスポーツ大会においては、大会主催者と被害者(選手)との間には何らかの契約関係(大会に参加を申し込み、それを承諾するという「参加契約」など)が存在すると認定されているので、原告は、主催者側が「事前の事故防止義務」「看護救助体制の確立義務」「事故発生時の救護措置義務」などを負っていたこと、およびそれらの「義務違反」があったことを具体的に主張立証していくことになる。

 不法行為責任でいうマラソン事故発生の回避義務違反と債務不履行責任でいう安全配慮義務違反の内容はほぼ重なり、この義務違反があれば主催者は損害賠償責任を負うことになる。

 「真夏の五輪」自体が

 東京五輪でマラソン事故が生じた場合、主催者として責任を問われるのは誰か。IOC、組織委員会、JOC、東京都、日本政府など多くが開催に関わっている。オリンピック憲章には「オリンピック競技大会を開催する栄誉と責任は、オリンピック競技大会の開催都市に選定された1つの都市に対し、IOCにより委ねられる」(和訳)と書かれている。開催の英文を見るとhostingとなっているので、主催とも解釈できる。

「オリンピック競技大会はIOCの独占的な資産」