この夏は猛烈な暑さが続いている。2020年の東京五輪への影響を懸念した国際オリンピック委員会(IOC)は、選手や観客、大会運営に当たる職員らを守るための具体的な暑さ対策を計画していると発表し、「第一段階は既に競技日程に反映されている」(広報)とコメントしている。(GBL研究所理事・宮田正樹)
夏のスポーツ大会で参加者が熱中症で倒れたり、死者が出たりした場合、その主催者は責任を問われるか。五輪でも懸念されているマラソンを例として、競技の途中で生じた事故(マラソン事故)に関する損害賠償請求について考えてみる。
争点は過失の有無
マラソン事故を原因として、被害者側が大会主催者側に対し、損害賠償請求をする場合に考えられる法律上の根拠としては、主に(1)不法行為に基づくもの(不法行為責任)(2)契約上の安全配慮義務違反に基づくもの(債務不履行責任)がある。
不法行為責任を追及する場合には、被告(主催者)の故意過失を原告(被害者)が主張立証しなければならない。マラソン事故において主催者側に故意があるケースは考え難いので、通常は過失の有無が争いとなる。過失とは、一般に「結果発生の予見可能性がありながら、結果の発生を回避するために必要とされる措置(行為)を講じなかったこと」(結果回避義務違反)とされている。原告は、主催者側にマラソン事故という結果の回避義務違反があったことについて、主張立証していくこととなる。