【高論卓説】自民「豪雨警戒中の宴会」の波紋 延期せず、無神経な写真投稿も問題 (2/2ページ)

「赤坂自民亭」で酒を酌み交わす安倍晋三首相(下段中央)と岸田文雄政調会長(同左)=5日夜、衆院赤坂議員宿舎(西村康稔官房副長官のツイッターより)
「赤坂自民亭」で酒を酌み交わす安倍晋三首相(下段中央)と岸田文雄政調会長(同左)=5日夜、衆院赤坂議員宿舎(西村康稔官房副長官のツイッターより)【拡大】

 この宴会で、もう一つ批判の対象になったのが、笑顔の上川陽子法相が安倍首相の横でガッツポーズをしている写真である。この翌日には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃死刑囚ら7人の死刑が同日執行されている。法務大臣が死刑の執行を命じてから5日以内に執行をしなければならないと法律に定められていることもあり、命令後は執行されるまで会う人にも気をつけ、喪に服するかのように慎重に振る舞うのが慣例だという。あまりにも不謹慎であり、多くの批判がネット上を飛び交うことになった。

 会合の世話役だった竹下亘総務会長は9日の記者会見で、「どのような非難も甘んじて受ける。そのときは豪雨がこれだけ大きな災害になるという予想は持っていなかった」と謝罪した。厳しく言えば、宴会を延期しなかったことも責められるべきだが、宴会を開いたとしても、写真を撮らない、ツイッターにその様子をアップしないと一言申し合わせれば、それで済んだはずだ。写真を撮影し誰でもが閲覧できるツイッターにアップすることをその場にいた50人近い国会議員は疑問に感じなかったのだろうか。

 スマートフォンで写真を撮影すれば、それをツイッターに投稿することは極めて簡単だ。だからこそ、慎重さが求められる。端的にいえば、もう少し神経の行き届いた、国民の目線を意識した使い方をすべきだろう。政治家は、有権者との距離を縮めようと思ってやっているのかもしれないが、こんな無神経な投稿を目にすれば逆効果になりかねない。

 ネットでの炎上を防ぐためのマニュアル本はいくらでもある。各議員は、今一度、基礎から学ぶべきだろう。

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【プロフィル】山田俊浩

 やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。週刊東洋経済の編集者、IT・ネット関連の記者を経て2013年10月からニュース編集長。14年7月から東洋経済オンライン編集長。著書に『孫正義の将来』(東洋経済新報社)。