東京地裁に入る東京電力の勝俣恒久元会長(右)=30日午前【拡大】
中でも武黒、武藤両被告が出席した会議で、19年の新潟県中越沖地震を受け、同県内の柏崎刈羽原発だけでなく、福島第1、第2両原発に対策を「水平展開」するための総予算について言及があったことが説明された際は、最終的に十分な防潮堤整備に至らなかったことを疑問に感じたのか、傍聴席から「んー」とうなり声も上がった。
関係者によると、数が二百数十にも上ったとされる証拠。これらの内容説明が終わると、弁護側の証拠調べに移った。
弁護側は予見可能性について「(国が)データとして用いる過去の地震に関する資料が十分にないことなどから限界がある」との見解を示していたこと、また震災後の専門家会議で「数百年の(地震)発生履歴から、マグニチュード9.0の大地震は想定することができなかった」との意見があったことなどを挙げた。
また、はっきりとした想定ではない試算のもとで防潮堤を整備していたとしても、津波が来襲する方角の予測を間違ったり、強度が十分でなかったり、十分な効力は発揮できなかっただろうとする東電従業員らへのヒアリング結果を説明。傍聴席からは厳しい目線が向けられた。
ここで初公判は終了。閉廷時刻は午後4時半と午前中から長丁場だったが、3被告とも疲れた様子を見せず、いずれも最後まで表情を変えないまま退廷した。