2017.3.6 06:22
東京都江東区の豊洲市場【拡大】
□産経新聞客員論説委員・五十嵐徹
築地市場の豊洲移転問題について、東京都議会が百条委員会を設置した。
地方自治法100条に基づく委員会には、強い調査権限がある。証人喚問や記録の提出を要求できる。正当な理由なく出頭を拒んだり、虚偽の証言をしたりすれば、禁錮や罰金が科される。
都が用地を取得した当時の知事である石原慎太郎氏ら、土地の所有者だった東京ガスを含め、移転事業の関係者が証人として喚問される見通しだ。
なぜ土壌が汚染された工場跡地を移転先に選んだのか、汚染対策費の多くを都が負担した経緯は何かなど、この問題では多くの都民、国民が疑問を抱いている。その意味で百条委への期待は大きいだろう。
石原氏は3日午後、日本記者クラブ(東京都千代田区)で、「喚問まで待てない」と記者会見し、豊洲移転は「当時の最高責任者として承諾した。責任は認める」と述べた。その一方、「やるべきことやらずに、ほったらかしにしている責任は今の小池(百合子)知事にある」とも述べた。
気になるのは、百条委設置の背景から、7月に投開票される都議会選挙を意識した政治的な思惑が強く臭ってくることだ。
政治ショーを懸念
産経は百条委の設置決定に先立つ2月19日付の主張(社説)で、「小池知事と石原氏らとの政治的な対立の構図」に触れ、「都議選向けにパフォーマンスが目的のような追及劇を演じ、事実を突き止められないような事態は避けねばならない」とくぎを刺している。
朝日も2月27日付社説で、「百条委は都議のパフォーマンスの舞台ではない」と強調。「『なぜ豊洲に決めたのか』という問いが向けられる先には、計画を認めた都議会も含まれる。その自覚なしに、勢いに乗る小池知事と共同歩調をとることを競う姿を見せられても、都民は鼻白むばかりだ」と議会の責任も厳しく問う姿勢を見せた。正論だ。