【松本真由美の環境・エネルギーDiary】鉄道とシカ衝突 (3/4ページ)

2016.3.7 05:00

 ◆現場調査から製品開発

 この発見を基に、塩に鉄粉を混ぜた固形物を試作し、シカの通り道に置くと、シカが次々とやってきてなめ始めました。鉄粉を地面にまくと、その場所の土をえぐり取るように食べていました。こうした実験を積み重ね、塩に鉄粉を主体としたブロック状の固形の誘鹿材「ユクル」(1個5キログラム)が誕生しました。

 「さびたレールやパイプでも実験しましたが、鉄が酸化した状態では誘引効果はありませんでした。パウダー状でイオン化しやすい鉄粉であれば摂取できるようです」(見城氏)

 ユクルの設置方法は用途によります。例えば、シカが線路に向かう通り道の途中にユクルを置けば、シカを足止めしてそれ以上、線路に近付かないようにすることができます。従来のシカ用わなは、そばに餌を置いて、頻繁に取り換えに行く必要がありましたが、ユクルは最大で半年間放置でき、手間がかからないのもメリットです。ユクルと各種わなを組み合わせれば季節を問わずシカの生体捕獲を行え、地域環境全体のトラブルを減らすことが期待されます。

 ◆入りにくく出やすい柵

 さらにシカが“入りにくく出やすい”形状の侵入抑止柵「ユカエル」を開発。ユクルとセットでシカ対策システム「ユクリッド」をつくりました。これも現地調査から開発したもので、従来とは逆の発想からの開発です。

 これまでは、シカが侵入しないように背の高い柵を置くのが一般的でした。「ところが映像を観察すると、シカは柵の切れ目などからそっと入り、柵から出るときはピョンと飛び越えて逃げます。列車に追い立てられると脱出しようとしても柵が高いと飛び越えられず、衝突が起きやすくなります。従来品の半分の高さで、鉄道特有の盛り土の斜面に垂直に立ててやることで入りにくくて脱出しやすい構造にしました」(梶村氏)

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