専門家らに聞き取り調査を行い、シカ肉に鉄分が豊富に含まれていることが分かったほか、シカ牧場での観察でシカが繰り返し鉄パイプをかじる様子を確認しました。
「餌を食べるための歯を削ってまで硬い鉄をかじるのは、シカにとって自殺行為といえます。よほどの理由がないとしないはずで、私たちは鉄不足を補うためではないかという仮説を立て、野生でも同じか現地調査を行いました」(梶村氏)
梶村氏と見城氏は鉄道会社に協力してもらい、岐阜県の関ケ原地区と垂井地区の2カ所に野生動物用カメラと赤外線動物カウンターを設置し、シカを徹底的に観察しました。これらに衝突情報、運転士の目撃情報を加え、調査データを収集していきました。2カ月に1度は現地に入り、線路に集まるシカの様子を観察。衝突後の現場を何度か目撃したこともあります。
「シカが線路周辺の草を食べた後、レールをなめる行動を示したのです。レールには車輪との摩擦で生まれた微細な鉄粉がついています。シカは鉄分を補うために線路に入り、レールをなめるという仮説が裏付けられていきました」(見城氏)
「13年3月、岐阜県関ケ原町の雑木林で鉄粉を散布する実証実験を行い、20~30頭のシカの群れが集まってきて鉄粉をなめる様子が確認できました。鉄分を補給するため、シカが線路に近付いていると確信しました」と梶村氏。これは、専門家も驚く新発見でした。