同社によると、一定の技術力が必要なため、全体の4割以上が業歴30年以上と新規参入が少ない一方、大半が立場の弱い2~4次の下請け業者のため、建物の売り主や元請け業者の意向に影響されやすいという。
また、建設市況が好調になって各業者が複数の現場を抱え込むと、すぐに人手が足りなくなる。工期遅れは、売り主や元請けから嫌われるだけでなく、自分たちが抱えている他の仕事にも影響し、結果として不利益を被る。このため業界には、いわば不正に手を染めやすい土壌があったとされる。
横浜市の傾いたマンションのケースでは、2次下請けの旭化成建材の現場管理者が3次下請け業者のオペレーターに指示してくい打ちをさせていた。建設業界の専門家は「(不正が)業界内に拡散していた可能性がある」と話す。
このマンションのくい施工が行われた平成17年12月~18年2月は、着工ブームに沸いていたころ。商工リサーチは「今後もデータの不正が出てくるとしたら、17、18年に施工されたものが多くなるのではないか」と懸念している。
マンション建設問題に詳しい日本建築検査研究所の岩山健一代表は「下請け業者たちは、(工期や費用で)元請けなどの意向に沿うことだけに一生懸命になっている。それではいい仕事はできない。小さな業者がひしめき合い我田引水を繰り返すのでなく、ある程度、余裕を持って仕事ができる業界の体制づくりが必要だ」と指摘している。