九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)の再稼働が大詰めを迎えたことに、東京電力福島第1原発事故を経験した福島県民からは「事故のことが忘れ去られている」と反対の声が上がる一方、「安全対策を徹底して動かしてほしい」と理解を示す人もおり、複雑な思いが交錯した。
全町避難した浪江町から福島市に移り、今も仮設住宅で暮らしている元会社員、松田勇一さん(65)は「一度事故が起これば、たくさんの街が一瞬で廃虚になる。4年以上たっても仮設での暮らしが続いているこの現状をしっかり見てほしい」と訴える。
事故後、川俣町から県外に自主避難し福島市で生活している元学習塾経営、相良(さがら)由美さん(58)も「あの事故の悲惨さが忘れ去られているのではないか。最近は地震や火山の噴火が日本列島のあちこちで起きている。事故が収束していない状況で再稼働を進めるのはおかしい」と憤る。
一方で、再稼働に理解を示す人もいる。南相馬市の元酒店経営、幾世橋(きよはし)初男さん(66)は「自然エネルギーは増やすべきだと思うが、それだけでは難しいだろう」と原発の必要性を指摘。「福島の事故を教訓に、二度とあんなことがないよう安全対策を徹底して動かしてほしい」と強調した。