2014.2.27 05:00
東嶋和子氏【拡大】
--原子力の位置づけや、全面自由化と発送電分離を柱とする電力システム改革のあり方を含めて、日本のエネルギー政策はどうあるべきと考えますか
「エネルギー政策は、『3E(エネルギーセキュリティー、環境性、経済性)+S(安全)』が基本といわれます。3Eのバランスではエネルギーセキュリティーの意味が最も重いと思います。安全保障と安定供給です。例えば、離島や災害時にも電力を安定供給するということを、自由化し発送電分離しても維持できるのでしょうか。東日本大震災のとき、東京電力と東北電力は世界でも類を見ない早期復旧を果たしましたが、そうした危機管理体制が維持できるのか、非常に心配です。『地域独占はけしからん。自由化すれば電気料金も安くなる』といった電気料金の問題や電力会社に対する懲罰感情からの電力システム改革は今やるべきことではなく、優先順位が違います。目先の議論だけで改革に走れば、結局は弱者にしわ寄せがいくとともに、国民の命にかかわる安全保障や安定供給を失う可能性があるということを強く警告したいと思います。今真っ先にやるべきことは、電力需給の安定化です。国民の生活の安定や産業競争力を維持するためにも、早く安全性が確認された原発を再稼働し、電力を安価な料金で安定供給できる体制に戻すことが最優先されるべきです。加えて、私はいつも『3E+S+T』と申し上げているのですが、テクノロジーに目を向けることも重要です。『モノづくり日本』を支えてきた技術を守り発展させるという意味と、エネルギー技術です。1つは原子力技術で、日本とフランスが世界をリードしています。国際原子力機関(IAEA)の専門家が女川原発を視察して『あれほどの地震動にもかかわらず、大きな損傷は見つからなかった』と驚きの声を上げ、世界原子力発電事業者協会(WANO)が震災当時の女川原発所長を『あなたたちを大変誇りに思っている』として表彰したように、大震災に耐えた日本の原子力技術には世界が注目しています。新興国を中心に電力需要が爆発的に伸びることが予想される中で、日本は原子力で世界に貢献していくべきです。もう1つは高効率火力発電、とくに石炭の高効率燃焼技術です。この分野も日本が世界の先頭を走っており、世界中が石炭の消費を増やす中で日本の技術を活用すれば、地球温暖化への貢献につながります。エネルギー政策を議論するには、事故を起こした福島第1だけを見て、安全に停止した女川や福島第2は見ないというように、『木を見て、森を見ず』ではいけないと思います。地球規模の視野を持って議論し、判断すべきです」(聞き手 神卓己)
<このシリーズは今回で終了します>