世界にエネルギー革命を起こしている「シェールガス」。世界の天然ガスの採掘年数は、従来の60年とされていた想定から4倍強の250年以上に拡大している。発祥地の米国は、天然ガスの輸入国から輸出国になることが確実だ。現代版ゴールドラッシュに沸く、米のシェールガス現場を訪ね、その背景を探った。
“シェールバブル”
米国北東部、アパラチア山脈の麓。ウェストバージニア州のマウンズビル市に入ると、幹線道路沿いに巨大なタンク群が現れた。天然ガスの分留設備だ。石炭が採掘されることから、元から化学関連産業の工場も立地していたが、近年、ガス関連産業の工場として使われる例が増えたという。
さらに進むと、道路沿いの空き地に「トレーラーハウス」と呼ばれるプレハブ住宅群も。掘削作業員用の宿舎として“整備”されたものだ。掘削需要の増大で、作業員が増加。住宅不足を招き、家賃は3倍強に跳ね上がっている。
周辺では瞬く間に9つのホテルも新設された。シェールが出るまでは「わずかな金属加工工場と、州の刑務所があるぐらい」(州政府幹部)だったマウンズビル市は今、“シェールバブル”で沸き立っている。行政区の首脳は「シェールは地区を変えた。新しい成長産業が生まれたことは幸運だ」と手放しで喜んだ。