しかし、新基準には脱法レバーの広がりを許す曖昧さが残る。基準では、生食用としての販売・提供を禁止しているものの、客自ら店内のコンロや七輪を使って生で提供されたレバーを焼いて食べることは認められている。
店側は、客にレバーが加熱用で、生で食べた場合に食中毒の危険性があることを伝え、客が加熱せずに食べようとしている場合には、焼いて食べるよう説明しなくてはならない。脱法レバーを提供している男性店主のケースでも、言葉では新基準に沿って行動しているが、常連客との「阿吽(あうん)の呼吸」で生レバーを提供している。
この曖昧な規定には、ルールを守ろうとしている店主からも困惑の声があがる。別の男性店主は客に「焼いて食べてください」と必ず注意しているというが、「店員が客の隣に立って十分焼いているか見るわけにもいかない。焼いたレバーしか提供できないようルールを変えるなど、行政がもっと徹底してほしい」と指摘する。
一方、厚労省によると、客の調理を禁止する案も内部で検討したが「焼き肉の中でレバーだけ焼く行為まで規制するのは公平性に欠く」などの理由で見送られたという。厚労省の担当者は「制度をより厳しくするのは公平性などの観点から難しい。店だけでなく、消費者の意識向上を図るしかない」と苦悩をのぞかせる。