日本沿岸のカツオ水揚げ激減 東南アジア諸国の“乱獲”に危機感

 

 日本沿岸のカツオ漁の不振が続いている。和歌山県の主要港では、およそ10年間で水揚げ量は10分の1程度まで激減している。東南アジア諸国の乱獲が一因との見方もあるが、明確な理由は不明で、関係者は不安を募らせる。漁の不振による価格高騰で、旬の初ガツオが手軽に味わえない状況もみられ、影響は広がりをみせている。

 イベント中止

 「数年前から数が少なくなり、大きさも小ぶりになっている」

 大阪の台所として親しまれる「黒門市場」で鮮魚店を営む平沢和孝さん(25)は、ため息をつく。黒潮にのって北上する初ガツオを和歌山県や鹿児島県から仕入れているが、今年は平年より1・5倍程度高い1キロあたり1200~1600円で推移しているという。

 同市場で30年にわたり鮮魚の卸売りをしている滝元孝志さん(56)も異変を感じている。この時期に扱う量が、ここ数年、減少してきているという。滝元さんは「値段も高く、初ガツオを食べる習慣そのものが廃れていくのではないか」と懸念する。

 地元で「ケンケン」と呼ばれる引き縄漁がさかんな和歌山県。最盛期は3~5月で、例年ならば、どの港も活気づくが、漁業関係者によると、一度の漁で数匹しかとれない日もあるという。「ケンケンかつお」を前面に売り出す同県すさみ町は今年、4月に開く恒例の「かつおまつり」を中止した。

 同県水産試験場資源海洋部によると、県内主要3港(串本、すさみ、田辺)の3~5月のカツオ水揚げ量は、平成15年は1167トンあったが、26年は72トンと10分の1以下まで減少。昨年は回復したが、135トンと低迷している。

 乱獲が一因?

 カツオは水温20度以上の海を好み、東南アジアなどの中西部太平洋を回遊し、水温が上昇する春の時期に日本近海にやってくると考えられている。

 ただ、世界的な魚食ブームも手伝って、東南アジアを中心にカツオ漁をする国が増加。水産庁などによると、多くが一本釣りの日本と違って、魚の大きさにかかわらず根こそぎ捕獲する巻き網漁が主流だという。同部の担当者は「本来は豊富な漁業資源として利用されてきた。乱獲の可能性はあるが、はっきりと解明はされていない」と話す。

 日本や東南アジアの国々でつくる中西部太平洋まぐろ類委員会によると、周辺海域のカツオ漁獲量は、2001(平成13)年は約111万トンだったが、13(同25)年には約181万トンを記録。

 年によって変動があるが、漁獲量の多い国は、日本の他に米国、韓国、インドネシア。特にインドネシアは約6万2千トン(2001年)から約17万トン(2013年)、米国は約7万4千トン(2001年)から約20万5千トン(2013年)、と増加。また、韓国も約11万5千トン(2001年)から約17万7千トン(2013年)に。日本近海で漁獲量が減る中で、全体では約1・6倍増加している。

 近海漁業者でつくる全国近海かつお・まぐろ漁業協会の担当者は「東南アジア地域での巻き網漁は脅威だ。将来的に完全にとれなくなるのではないか」と危機感を募らせている。