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「脱アルコール」へ飲料各社 健康志向高まり コロナ禍も転換点 (2/2ページ)

 大手からは近年相次いで新商品が出されている。メルシャンを傘下に持つキリンホールディングス(HD)グループのほか、サッポロビールは機能性表示食品のノンアルビール「うまみ搾り」を発売、サントリースピリッツはノンアルのレモンサワーを売り出した。アサヒビールは、令和7年までにアルコール度数3・5%以下の商品構成比を20%に引き上げる目標を掲げ、今年も複数の商品を発表している。

 これらの動きは一方で、業界の命運をかけた取り組みでもある。WHOは2013年、アルコールによる健康被害などを少なくとも10%削減する世界目標を掲げた。その後も飲酒問題について提唱し、22年の総会では具体的な計画について検討される見込みだ。

 WHOの動向に、業界内では「たばこの次は酒か…」との警戒感も高まる。生き残りをかけたたばこ業界が加熱式たばこを投入したように、飲料各社でも適度な飲み方を指す「適正飲酒」を促す流れが強まり、ノンアル飲料の開発競争が始まった。

 このほか大手などは、商品のアルコール度数(%)だけでなく量(グラム)もホームページや容器に表示する計画を進める。個人に合わせた節度ある飲み方を啓発するなど、対策の幅は広がっている。(加藤園子)

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 ノンアルコールや低アルコール飲料の伸びは新型コロナウイルス禍も関係している。飲酒を伴う会食が感染拡大の要因のひとつとされる中、ノンアル飲料は飲食店でも人気が上昇。外出自粛は消費者の健康志向も強めており、コロナ禍もノンアルシフトへの転換点となった形だ。

 ビール大手4社の昨年12月期連結決算は、飲食店の営業時間短縮や休業で業務用の酒類販売が大幅に落ち込み、そろって減収となった。一方で、お酒の代わりの選択肢としてノンアルビールを提供する飲食店も増加。キリンビールのノンアルビール「零ICHI」は4月の業務用販売数量が前年同月比で5倍となった。

 一方、「家飲み」や運動量の減少に伴う健康志向の高まりもノンアル人気を支える。サントリーはノンアル飲料を飲む量が半年前より増えた人は「健康に気を付けたい」「休肝日をつくりたい」など、健康面を意識していると分析している。

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