国際オリンピック委員会(IOC)がバーチャルスポーツ大会「オリンピック・バーチャルシリーズ」の初開催を発表し、野球競技でコナミデジタルエンタテインメントの人気ゲーム「パワプロ」が採用されたことが大きな話題を呼んだ。ビデオゲームを競技としてとらえる「eスポーツ」で若者らにアピールし、身体を動かすスポーツへの参加をうながすのが狙いだ。パワプロの予選を監視の目が行き届かないオンライン方式で行う予定だが、ゲーマーの間で横行するチート(不正行為)をどう防ぐのか。コナミに対策を聞いた。
■不正対策は“二刀流”で
「若者を(野球に)引き込むためにeスポーツは重要だ。コナミとの協力体制でそれが成功すると確信している」
共催する世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のリカルド・フラッカリ会長は4月26日、オンライン記者会見で期待を示した。
今大会で使用されるソフトはPlayStation(プレイステーション)4とNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)向けに販売されている「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」だ。PS4部門では試合形式で、Switch部門ではホームラン競争のようなカジュアルゲームで参加者らが腕を競う。同席したコナミの早川英樹社長は、日本や韓国、台湾でゲームを所有する約50万人に参加資格があると明かし、「1人でも多くの参加を」と呼びかけた。賞金はないが、優勝者らに記念品などの贈呈を検討するという。
6月23日に東京・銀座で行われる決勝大会に出場できるのは、PS4部門の11人とSwitch部門の8人。オンライン予選は今月24日から始まる。
競技実施のために公正さが不可欠なのはスポーツ大会と変わらない。だが、ソフトウェアを改変するチートには著作権法で問題になる可能性があり、運営会社の業務を妨害する事態につながりかねないと理解しながら、ひとときの栄光のために不正に手を染める人が出てきても不思議ではない。
コナミの広報担当者にソフトウェアのチート対策を聞くと「オンライン予選終了後に試合内容をチェックし、試合に不自然な点がないか、不正プレイが無いかを確認します」と回答があった。
具体的な方法は示さなかったが、蓄積したデータから通常ではありえないような部分をテクノロジーで洗い出し、必要に応じてリプレイ動画を目視で確認する流れになるという。日本野球機構(NPB)とパワプロの国内プロリーグを共催し、豊富な既存データと知見を持つコナミだからできる、デジタル技術と人力の“二刀流”というわけだ。
また「コントローラーの違いがプレイに影響がない」(同)ことから、現状では使用機材の指定はしないとした。射撃の腕を競うeスポーツでは、コントローラーの代わりにキーボードとマウスで操作するとエイム(狙い)が正確になることから、ルールで認められていない周辺機器を用いた「ハードウェアのチート」が批判の対象となっている。