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異彩放つパナソニックの中国シフト 「中国頼みは賭け」の指摘も (2/2ページ)

 就任9年目の津賀社長はプラズマテレビ事業からの撤退など構造改革で一定の成果を上げてきたが、稼ぎ頭を生み出すことに苦戦し、業績は低迷している。

 成長の柱にすべく数千億円を投じた北米工場で量産を始めたテスラ向けのEV電池事業は、テスラが中国や韓国メーカーなどを調達先に追加したほか、自社生産も目指すと表明するなど先行きが不透明だ。新体制でも構造改革が先行する状況になれば、業績回復までの道のりは遠くなる。

 専門家「中国頼みは賭け」

 そんななか、再編で異彩を放つのが「中国・北東アジア事業」だ。現体制で米国事業を統括するUS社は「発展的に解消」(津賀社長)して各事業会社に移管する一方、中国を中心に台湾や韓国も管轄するCNA社は唯一、地域軸の社内分社として再編後のパナソニックに組み込む。

 昭和62年に日本企業として戦後初めて中国に進出した同社は現地での生産・販売だけでなく、人材獲得や研究開発も手掛けてきた。近年はIoT(モノのインターネット)技術を生かして家電と住宅設備を組み合わせるスマートホーム事業に注力。来年度からは浙江省で家電の工場としては16年ぶりに中国に建設する調理家電の生産拠点が操業を始めるなど、“中国シフト”ともいえる戦略だ。

 ただ、地域別売上高で中国は平成27年度から1兆円を下回り、米中貿易摩擦やコロナの影響もあって、令和元年度には米国事業の半分程度の7548億円まで減少。白物家電の販売を強化しブランド力を高めて企業向け製品にも拡大する青写真を描くが、中国ではハイアールなどの現地メーカーが高いシェアを占める。

 電機業界に詳しい流通科学大の長田貴仁特任教授は「中国の家電メーカーは技術力を高めており、以前のように価格だけを武器にしていない。競争は厳しく、『中国頼み』は一種の賭けになる。パナソニックには、業界の構造を激変させるほどの『破壊的イノベーション(技術革新)』が必要だ」と指摘している。

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