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STOで変わる流通市場 セキュリティトークン・オファリングとは何なのか (2/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 信託受益権や集団投資スキーム持分などの権利のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるものが、金商法上、新たに「電子記録移転権利」と定義された。この「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値」という部分が、主に分散型台帳技術を用いたトークンと考えられている。

 電子記録移転権利は、トークン化により流通性が高くなり投資家を保護する必要性が高まるという理由から、株式や社債などの伝統的な有価証券と同じく第一項有価証券として取り扱うこととされ、厳格な規制が適用されることになった。

 2010年代前半から、ブロックチェーン技術を活用した資金調達方法「イニシャル・コイン・オファリング」(ICO)が注目されていたが、STOがICOと大きく異なる点は、金商法上の規制を遵守する形で行われる点だ。

 山下弁護士は「ICOもSTOもトークンを用いた資金調達手法という点では同じですが、不透明なトークンを扱っていたICOとは異なり、STOで扱うトークンは有価証券をトークン化している点で大きく異なります。またICOでは、明確な定義や規制がなかったために、詐欺的な事案や事業計画が杜撰(ずさん)な事案も多く、利用者保護が不十分でしたが、STOでは、金商法上の規制に服することから、より投資家の保護を図る仕組みができています」と強調する。

STO普及への課題は…

 セキュリティトークン分野の健全な発展、投資家の保護を目的に2019年10月、日本STO協会が設立され、今年4月には金融庁から「認定金融商品取引業協会」の認定を受けた。同協会は、金融商品取引業者や登録金融機関が行う電子記録移転権利取引の自主規制機関として、自主規制規則の制定やガイドラインの策定など自主規制業務を行っている。

 同協会の小柳雅彦事務局長は「自主規制業務に加えて、セキュリティトークンの取引促進や流通のためのさまざまな課題に取り組んでいます。電子記録移転権利の譲渡については、取引をデジタルで完結させるために法律面での課題があります。税制面でも、既存の第一項有価証券と同様に申告分離課税、損益通算・繰越控除を適用し、特定口座での取り扱いが投資家にとって必要不可欠です」との見解を示す。

 セキュリティトークンは金商法上、株式や社債のような第一項有価証券をトークン化したものと、電子記録移転権利の2つに大別される。後者は、信託受益権や集団投資スキーム持分など第二項有価証券に位置付けられていたもののうち、トークン化された権利をいい、今回の金商法改正で第一項有価証券の同等の規制の対象となった。

 小柳事務局長は「既存の証券会社が電子記録移転権利を取り扱うためには、金融商品取引業の変更登録が必要になります。また、セキュリティトークンを発行するためのプラットフォームが重要になってきます。協会としては、電子記録移転権利の取引安全のために、そのモニタリング、監査に注力していきます」と話す。セキュリティトークンを発行するためのプラットフォームにかかるリスクのモニタリングも協会の重要な役割だ。

 また、電子記録移転権利から除外され、従来の第二項有価証券と同じ扱いのままとなるケースもある。それは、トークン化された信託受益権や集団投資スキーム持分などのうち、内閣府令で定める除外要件に該当するケースである。日本STO協会設立の背景について、山下弁護士は「金商法上の区分が変わり、第一項有価証券扱いの電子記録移転権利と第二項有価証券扱いの電子記録移転権利から除かれるものができたため、自主規制の範囲として第一項有価証券と第二項有価証券の両方を横断的にカバーする協会が必要だったということも、その設立背景にあります」と説明する。

 同協会では今後、会員や関係者と緊密に連携し、セキュリティトークンの発行、流通を促すための必要な調査・検討を行い、取組みを進めるとともに、国内外のSTO関連情報の共有、研修・セミナーを実施していくとしている。

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