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STOで変わる流通市場 セキュリティトークン・オファリングとは何なのか (1/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 今年5月の改正金融商品取引法(金商法)施行を契機に、「セキュリティトークン・オファリング」(STO)に対する関心が高まっている。STOとは、ブロックチェーン技術に代表される分散型台帳技術を活用し、トークン化された有価証券である「セキュリティトークン」を発行して資金調達を行う仕組みだ。「仮想通貨」と呼ばれた暗号資産の多くは明確な発行者や管理者がいないのに対し、セキュリティトークンは発行者による証券規制の中で発行されるため、より投資家の保護に資するとされる。分散型台帳技術で管理されることから24時間取引が可能になるほか、社債や不動産などの投資単位の小口化や金融商品の多様化によって投資家層の裾野が広がると期待されるセキュリティトークン。その現状と今後の展望をレポートした。

STOのメリットと可能性

 「STOで期待されている効果として、情報の透明性、利便性、効率性の向上が挙げられます」

 こう解説するのは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の山下貴行弁護士。投資家保護を目的に設立された一般社団法人日本STO協会では、自主規制企画・業務部のシニアマネージャーも務め、現在も同協会に対してアドバイスを行っている。山下弁護士は「セキュリティトークンの技術を用いることで、投資家による取引可能時間が拡大する可能性があります。将来的には、証券取引所が開いていなくても、24時間どこでも取引ができるようなセカンダリー市場(流通市場)が実現するかもしれません」と語る。

 セキュリティトークンは分散型台帳技術により改竄(かいざん)も難しいという利点も持つ。「これまでは、有価証券を主に証券保管振替機構が中央集権的に管理してきましたが、セキュリティトークンを用いることで、分散型台帳の参加者全員で管理することができます。そのため、記録の改竄が難しい仕組みも可能になります。また、ブロックチェーン上でいつでも最新の情報が閲覧可能であるため、情報の透明性が向上します。さらに、投資家の管理がこれまでよりも容易になるため、投資単位の小口化や業務の効率化にもつながります」(山下弁護士)。

 有価証券の注文照合や期中管理などの業務をスマートコントラクトによって自動化することで、処理時間やコストの削減や投資単位が小口化され、中小規模の資金調達にも活用できる。さらに、発行体が投資家情報を把握しやすくなるため、各投資家に向けて地元企業の商品や地場産品などが購入できるポイントを利息代わりに付与するなど多様な金融商品が設計できるメリットもある。STOによって投資家層の裾野が大きく広がりそうだ。

STOとICOの違い

 改正金商法の施行後、耳にする機会が増えているセキュリティトークンは、株券や社債券などの有価証券に表示される権利をトークン化したものだ。セキュリティトークンを投資家に販売、勧誘することを公募、私募問わず一般的にSTOと呼んでいる。

 セキュリティトークンという言葉自体は、日本では法令上明確に定義されたものではないが、改正金商法ではセキュリティトークンの形式で発行する信託受益権や集団投資スキーム持分など、いわゆる金商法上「第二項有価証券」と呼ばれてきた権利が規制対象とされている。なお、株式や社債など金商法上「第一項有価証券」と呼ばれるものは、内閣府令でトークン化された有価証券の規制が追加された。

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