MLBは1994年8月から95年4月まで続いた選手による232日間に及ぶ長期ストライキで、ファンの野球離れを招いた。この苦境を救ったともいえるのが、近鉄バファローズを退団して95年2月にロサンゼルス・ドジャースに入団した野茂英雄選手であった。彼の活躍は驚きと称賛をもって米国に受け入れられるとともに、イチロー選手を含む、その後の日本人選手の流出のきっかけとなった。
イチローがシアトル・マリナーズの選手としてメジャーリーガーとなった2001年にはバリー・ボンズ選手が73本のシーズン最多本塁打記録を樹立した年だったが、後年、多くのパワーヒッターにアナボリックステロイドなどの薬物使用が認められ、MLBのビジネスに影を落とした。
それにもかかわらずMLBの収入の巨大化と選手年俸の高騰は、リーグが主導するさまざまなビジネス努力はあるものの、基本的な要因はテレビを中心とするメディア収入の増大にある。リーグが一括して契約しその収益を各チームに分配している全国ネット放送権とは別途、RSN(リージョナル・スポーツ・ネットワークと呼ばれる地元ケーブルテレビ局)と地元チームとの独占放送契約による放送権収入が近年高額化し、各チームを潤しているのだ。プライス・ウォーターハウスの調査によると、18年にRSNからの収入が入場料収入を上回った。
日本球界にエール
この大きなマネーの流入を維持するためにも、優秀なパワーのある選手を金の力で世界中から集める。それが報酬の高騰を招くというサイクルに陥っているのがMLBの現状だ。この状況を肌身で感じてきたイチロー選手が引退インタビューで次のように語ったことを、日本人として傾聴しなければならない。