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AIが侵食、日本の労働人口49%代替予測 「熟練者の勘」必要性乏しく (2/2ページ)

問いの発見 付加価値生むのは人間

 一方、AIは学びの場にも変化を迫っている。

 教室に英ロックバンド、クイーンの楽曲が鳴り響く。一斉に足し算の演習を始める児童たち。東京学芸大付属世田谷小(東京)の1年1組担任、沼田晶弘教諭はマイクを口元に装着し、一人一人が解き終えていく様子を実況中継する。

 ◆東京土産から展開

 「ただの計算ならAIに負ける。やればできるということを覚えてほしい」。考える上で土台となる知識が面白がりながら自然と身に付く授業を目指す。

 以前受け持った4年生のクラスに「代表的な東京土産は何か」を考えさせた。インターネットで検索した内容を報告する児童らに「探すだけならグーグルに負ける。先を考えろ」と指導した。東京都民が慣れ親しんでいるか、近所のスーパーに置いてあるかなどを議論した末「これといった伝統的な土産物はない」との結論に至り、さらに「バナナ味の菓子はなぜ東京土産の代表の座に就けたのか」という問いへと発展していった。

 AI時代の教育再考を説く慶応大の田中浩也教授は「人間にできるのは問いを発見することだ」と指摘。「受験という正解を探すゲーム」に追われる現状を脱し、教師が自分も分からない問題を子供と一緒に学び考える勇気が必要だと語る。AIが活躍する社会でも色あせない、人間ならではの価値とは何か。教育現場の手探りが続く。

 ◆生まれやすい格差

 変化を迫られているのは社会人も同じだ。医療系商社に勤める大畠愛さん(45)は、AIによる業務改善の検討を上司から命じられたが、何から手を付けていいか分からず、大学院のAI関連講座の受講を決めた。学び直しを通じ「最新の技術に適応しなければ優秀な若い世代に置いていかれる」と危機感を深めた。

 ビジネスの各方面でAIを使いこなせる人材の不足は深刻だ。キカガク(東京)が提供するAI技術の研修は、創業から2年で受講者が1万3000人に達した。吉崎亮介社長は「弁護士、会計士、弁理士の危機感が強い。データの読み込みはAIに任せ、人間はAIを使って付加価値を生む仕事に集中する世界になるだろう」と予測する。

 変革期にはチャンスと同時に格差も生まれやすい。日本ディープラーニング協会がAIの活用能力を認定するため実施している検定では、累計の受験者約6000人の7割以上を首都圏が占め、受験者数が1桁の地域も珍しくない。こうした格差が経済のひずみを拡大させる危険もはらんでいる。

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