経営
残った若手社員たちの、意外な行動 不満分子が大量退職した会社で起きたこと (2/7ページ)
一番苦しいとき、うれしいことが降ってくる
主力がごそっと抜け、製造現場に残ったのは嘱託のシニア社員たち、私と同期入社の10年目社員、若手社員だけだった。「がんばってアカンかったら、会社が潰れてもいい」と覚悟した。ここからは本当に苦労した。ただ、目の上のたんこぶがいなくなったことで、若手社員たちが奮起してくれた。彼らは、去っていったベテランたちに腹を立てていたのだ。やりたくもない残業に付き合わされ、自分の時間を奪われていたからだった。
製造現場の人員体制が崩れ、一人当たりの仕事量は急激に増えた。不本意な残業をさせられていた若手社員たちのモチベーションが、そこでハネ上がるなんて、想像もしなかった。24時近くになると、「終電に間に合わんから帰れよ」と私が声をかけるのだが、若手社員たちは「会社に泊まっていいですか?」と言ってくれた。ほぼ毎晩のことだ。奮起してくれるかもしれないとは思っていたが、ここまで言ってくれるとは思っていなかった。心の底から、うれしかった。
社員のみんなにはたいへんな負担をかけてしまったが、私は毎日が楽しかった。製造現場に栄養ドリンクを差し入れたり、夕飯代を渡したりして、全員でピンチを乗り越えた。まるで、お祭りのようだった。社員一人ひとりが、自分の意思で、自分のやり方で、本気で仕事をした結果、業績は回復した。
一番苦しいとき、うれしいことが降ってくる--。これは、私の人生観になった。