2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて、日本の「おもてなし」の良さが世界へ広まる中、主に中国からの訪日旅行客に対し、老舗ブランドでのショッピングや伝統文化を体験してもらうガイド業を運営しているのが雅縁(がえん)の和田瑛子社長だ。中国・上海出身で約30年日本に在住しており、国籍も取得した。プライベートガイドとして富裕層の観光客を案内するほか、留学生向けに一流ホテルでのアルバイト紹介を通じた「おもてなし」を担う人材育成にも取り組んでいる。
◆「もてなしの心」紹介
和田社長は、訪日客の希望をかなえるため、事前にヒアリングをしてオリジナルのプランを作成。案内先のホテルやショップと細かく打ち合わせた上で、最大限のもてなしを提供している。団体客向けのガイドとは違い、顧客の要望をくみ取るため適切な店舗を選定するとともに、高級品に対する目利きも重要になってくる。
中国で改革開放政策が始まったばかりのころ、山口百恵主演のドラマや日本に関するニュースをテレビで見て「将来日本に留学して、仕事をしながら生活したい」と憧れを持つようになる。その後日本で仕事をしていた親戚から留学を勧められる。既に大学に進学していたが「この機会を逃せばいつ日本に行けるか分からない」と中退して、1989年に来日した。
当時、日本はバブル景気に沸いていた。赤坂プリンスホテルなどでアルバイトをしながら日本語学校を経て、専門学校のホテル学科で学んだ。
卒業後は新宿プリンスホテルで、主に香港・台湾からの団体客の接客係を担当したが、結婚、出産を機に退職した。13年間、専業主婦として家庭に入る。しかし、子育て中も仕事のことが頭から離れず、添乗業務ができる総合旅程管理主任者の資格を取得した。
子育てが落ち着いたことから、増え続ける中国人客に対応する人材を探していた東京・銀座の老舗テーラー「銀座英國屋」に入社。一流の職人の仕事ぶりと洗練された接客に感激し、「日本の高品質の製品と、もてなしの心をもっと多くの訪日客に紹介したい」と起業を志すようになる。
◆留学生の人材育成
富裕層を対象としたプライベートガイド業を開業したのは「潜在ニーズがあるのに同業者が存在していない」からだ。これまでに政府要人や芸能人、経営者などの「テレビでしか見たことのない人」を案内してきた。
留学生に対し、高級ホテルなどでのアルバイトを紹介する人材事業にも参入した。一流のマナーや接客を身に付けて成長してもらい、人手不足の日本に貢献するためだ。これまでに中国、ベトナム、韓国などアジア人留学生中心に100人以上を仲介している。
東京五輪・パラリンピック以降の景気後退が一部で懸念されているが、「五輪が終わっても訪日客は減らない。日本に魅力があるからもっと増えていくだろう」と不安はない。将来は各分野のトップ企業とともに「ウエルカム・ジャパン」というチームをつくり、さらに世界の富裕層に向けて日本のライフスタイルを発信していく考えだ。
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【プロフィル】和田瑛子
わだ・えいこ 東京観光専門学校ホテル学科卒。プリンスホテル、銀座英國屋、インターナショナルバーバリーなどを経て、2015年4月雅縁を設立し、現職。50歳。中国出身。
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【会社概要】雅縁
▽本社=東京都中央区銀座6-2-7 HK銀座502室
▽設立=2015年4月
▽資本金=1000万円
▽従業員=3人
▽事業内容=旅行業、人材紹介業