日本の製造業、デジタル革命で巻き返し 工場IoT化、日立は生産期間半減 (3/3ページ)

大みか事業所の制御装置組立ライン。8台のカメラが作業者の動きを録画し、作業の遅れなどを検証する=2017年11月、茨城県日立市
大みか事業所の制御装置組立ライン。8台のカメラが作業者の動きを録画し、作業の遅れなどを検証する=2017年11月、茨城県日立市【拡大】

  • 日立製作所の大みか事業所(同社提供)

 設備にセンサーを組み込むなどして作業の「見える化」を進めるほか、鎌倉製作所内の設計棟や衛星機器を生産する相模工場(同相模原市)とネットワークで連携し、設計や作業データを常時やり取りして生産性向上につなげる。柵山正樹社長は「まずはIoTを全事業所に展開し、高い成果を上げた上で他社にも展開したい」と意欲を示す。

 各社がIoT開発に注力するのは、高い成長が期待できるからだ。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、IoTの世界市場規模は30年には16年の約2倍の404億円に達する見通しだ。一方、日本生産性本部によると、00年に米国に次ぎ2位だった日本製造業の労働生産性は17年に20位まで下落した。欧米の強さの原動力は生産性を大きく高める工場のIoT化とされる。強い現場でアナログの「カイゼン」に頼りすぎた日本は投資が遅れており、デジタル革命が日本製造業の浮沈を握るとの見方もある。

 欧米勢と開発競争

 IoTによる生産改善は日立など日本勢だけでなく、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスも力を入れており、センサーで機械の不具合を未然に検知したり、設備や拠点間をつないで情報をやり取りして、コストを下げる技術などで先行する。IoT技術をめぐる開発競争はさらに激しさを増しそうで、日本勢が勝ち残るのは並大抵ではなさそうだ。(万福博之)