九州人が「うまかっちゃん」を偏愛する理由 「味」変わらないのになぜ人気? (4/4ページ)

 だが、グラフィックデザイナーとして多数の作品を残した西島伊三雄氏(福岡市出身。故人)に相談した際、博多弁で「とてもおいしい」を意味する「うまか」に「ちゃん」をつけるネーミングがひらめき、愛用の筆で一気に「うまかっちゃん」と書き示したという。イラストは博多祇園山笠の子どもたちだ。

 九州場所力士のシメは「5かっちゃん」

 今年は土俵の内外でさまざまな話題を呼んだ大相撲九州場所だったが、九州場所でご当地入りする相撲取りにも「うまかっちゃん」は人気だ。ある部屋では、力士の食事「ちゃんこ」のシメに利用される。袋めんの5個パックは、ひそかに「5かっちゃん」と呼ばれるが、力士は1人前=5かっちゃんが定番。最後のシメにこれを入れて、おいしそうに食べるという。そして、普通の人にとっても「うまかっちゃん」のまとめ買いは当たり前になっている。

 「段ボール1ケースで、5個入り×6パックの30食入りも販売しており、年末年始やお盆の時期には、ケース販売の人気が高まります。お客さまからも『九州に帰省した際に、まとめて買う』という声が寄せられます。人気なのは九州人に身近な味で、たとえば今年の2月に数量限定で販売した『めんたいとんこつ』は好評でした。一方、東京で流行したつけめんにヒントを得た『つけ麺』シリーズを提案しても、九州では受け入れられませんでした。それも九州の方のこだわりだと思います」(長江氏)

 子ども時代の思い出や、昔ながらのモノやコトを愛することは「ノスタルジー消費」といわれる。九州人の「常備食」であり、他地域に住む九州出身者には「ノスタルジー食」でもある「うまかっちゃん」--。近年はインターネットでも購入できるようになったが、年末も近づいた現在、そろそろケース買いする人が増えそうだ。

 高井 尚之(たかい・なおゆき)

 経済ジャーナリスト・経営コンサルタント。1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 (経済ジャーナリスト 高井 尚之)(PRESIDENT Online)