無資格検査“性善説”も遠因 国交省、制度の運用見直しへ議論加速

会見するSUBARUの吉永泰之社長=27日午後、東京都渋谷区(佐藤徳昭撮影)
会見するSUBARUの吉永泰之社長=27日午後、東京都渋谷区(佐藤徳昭撮影)【拡大】

 スバルでも、無資格の従業員が新車を出荷する前の「完成検査」をしていた実態が判明したことで、各メーカーが独自に検査員の認定基準などを定める現行制度のほころびが改めて浮き彫りになった。制度の運用見直しに向けた議論が加速しそうだ。

 道路運送車両法に基づく完成検査は、本来は車検場で1台ずつ受ける完成車の安全確認をメーカーが代行できる制度。事前に保安基準を満たす仕様となる「型式」に照らして安全確認を実施することで、大量生産を可能にする。

 完成検査が実効性を持つには、メーカーが検査水準を担保してくれるという“性善説”が大前提だが、国土交通省の通達で検査員の認定基準や手法に裁量を与えたことで、現場のルール解釈が曖昧になり、結果的に無資格検査を生む素地になった。

 スバルでは検査員の資格には実務経験が必要と規定され、実務経験の一環として無資格検査が行われていた。日産のケースでも無資格検査を実施した「補助検査員」は同社独自の肩書で、補助検査員自身が「自分は検査していい」と錯覚していたという。

 国交省はメーカーごとに車種や製造方法が異なる実情に配慮し、「メーカーに一定の裁量を与える制度設計は避けられない」(自動車局)との立場だが、事案の広がりに制度解釈や運用の曖昧さを排除する取り組みが避けられない。石井啓一国交相は27日の会見で「確実な実施のために見直すところがないか検討したい」と述べた。(佐久間修志)