ビジネスとしては成り立たなくても、周辺住民には欠かせない-。2007年の郵政民営化から10年がたっても、郵便局をめぐる環境は変わらない。日本郵便などは、全国の利用者に一律の「ユニバーサルサービス」を提供することが義務づけられているからだ。日本郵便の親会社、日本郵政の長門正貢社長は「セブン-イレブンはもうかる場所にしかないが、郵便局は違う。僻地(へきち)・離島でも置くのがわれわれの使命だ」と話す。
1873億円のコスト
だが、日本郵政は15年11月に株式公開を果たした上場企業。株主に対して利益を最大化する責任を負っている。その側面からみると、ユニバーサルサービスは利益を下押しするコスト要因でもある。総務省が同サービスの13年度のコストを試算したところ、郵便役務だけで1873億円という巨額になった。
また、普通企業なら、売り上げが伸びなければコストを減らして利益を出す。例えば、展開する店舗や事業所の統廃合だ。しかし、日本郵便にとって、郵便局は“聖域”に近い存在だ。 郵便局数は今年8月末時点で2万4052と、10年前の2万4540から2%しか減っていない。長門社長は「お客さまに支障がなく、経済効果があると説明できるという前提において、首都圏で近接している局などを対象に(統廃合の)議論はあり得る」との立場だが、検討はなかなか進まない。自民党の有力な支持基盤である全国郵便局長会との調整など政治家の説得という高いハードルがあるからだ。
◇
■業績改善へ地道な取り組み徹底
そこで、日本郵便がとっているのが、地道な収益改善の取り組みだ。6月のはがき値上げに続いて、来年3月からは「ゆうパック」の値上げにも踏み切る。