なぜファストリ柳井氏はブレない? カツ丼と天丼で迷ったら…優秀な経営者の意思決定 (1/6ページ)

「このノートを踏み台にして、あなたに柳井正を超えていってもらうこと、それが私の心からの願いです。」
「このノートを踏み台にして、あなたに柳井正を超えていってもらうこと、それが私の心からの願いです。」【拡大】

 ファーストリテイリングの柳井正社長は『経営者になるためのノート』をユニクロ全店長に配布している。2015年、門外不出だったこのノートがPHP研究所から出版された。ノートの作成を手伝った経営学者の楠木建氏は「本文を読むだけでは、このノートの価値の10%も享受することはできない」という。どう使えばいいのか。解説してもらった--。

 なぜ柳井正の口癖は「当たり前」なのか

 7年ほど前、柳井正さんから「社内教育機関『FRMIC』の立ち上げを手伝ってほしい」といわれました。私と『経営者になるためのノート』(PHP研究所)との関わりは、そのときまでさかのぼります。

 「FRMIC」は従来型の職場を離れて学ぶような社内教育機関とは、まったく異なる発想を持っています。あくまで日々の自分の仕事の中で、自分の頭で考え、目の前の課題を解決することで、経営者人材を育てることが狙いです。

 そのために、まずは柳井さんの頭の中にある経営の「原理原則」を1年ほどかけて言語化することから始めました。しかし柳井さんへの聞き取りを重ねるにつれて、「これはかなわない」と参ってしまいました。

 柳井さんの口癖は、「当たり前ですけど」。問題解決について柳井さんに尋ねると、「経営者は結果を出さなくてはならない」とか「経営者の役割は急成長して高収益をあげることだ」といった当たり前のことばかりが返ってきます。

柳井さんが何を聞かれても「当たり前ですけど」と答えるのは…

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