□産経新聞論説委員・鹿間孝一
神戸の街は背後に六甲山系が迫り、東西に細長くて狭い。かつて山を削ってニュータウンを開発し、その土をベルトコンベヤーで運んで沖合を埋め立て、人工島・ポートアイランドを造成した。
一石二鳥の手法は「山、海へ行く」のキャッチフレーズで有名になった。
民間企業のように柔軟な発想で利潤を追求する姿勢は、自治体経営のお手本とされ、「株式会社神戸市」の異名を取ったが、これは誤算だった。
神戸空港である。
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そもそもボタンの掛け違いがあった。
騒音問題で大阪(伊丹)空港の移転が論議された時、神戸沖も有力候補になったが、地元の反対で実現せず、泉州沖に関西国際空港が建設された。
ところが、1995年に阪神大震災が起き、神戸市は復興事業の目玉として、さらに防災の拠点として神戸空港の計画を打ち出した。
大阪府や経済界が反発したのも当然だろう。オール関西で取り組むべき新空港を一旦は断っておきながら、震災という未曽有の災害があったとはいえ、地域の事情で空港を建設するという。25キロ圏内に近接する3つの空港は明らかに多く、共倒れになりかねない。