交渉の足かせとなっているのが、三重県四日市市の工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)との対立だ。WDは、売却差し止めを求めて国際仲裁裁判所に提訴している。「前哨戦」となる米裁判所の審問では差し止められずに済んだが、秋ごろに審理がスタートするとみられる「本番」の仲裁裁で、東芝の勝利が保証されているわけではない。そこで、仮差し止めの判断が下るようなら、売却計画が白紙になりかねない。
こうした中、東芝と日米韓連合の間では、差し止められた場合のリスク負担をめぐり意見が対立。革新機構の志賀俊之会長は「折り合いがつかなかった部分について歩み寄った」と語るが、リスクを恐れる東芝はいまだに不十分とみなしている。
綱川氏の姿勢に疑問
東芝は「(日米韓連合と)目標時期までに合意に至らなかった」(綱川社長)として、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業やWDとも交渉を開始。社内には、高値売却が期待できる鴻海を推す意見や、WDとの和解を主張する意見もあり、一枚岩になりきれていない。
東芝は、経営破綻した米原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の買収や、15年に発覚した不正会計など、経営判断のミスで傷口を広げた。「こういうときはリーダーシップを発揮してほしい」。日米韓連合関係者は、独断専行を好まず「調整型」とされる綱川社長の姿勢に疑問を呈した。(井田通人)