◆予想より早く
停止場所近くの橋から見守るJOTの渡辺さん。会津若松方面のレールを眺め「応援が来るとしたらこちら側からだろう」。独り言をつぶやく。「あ、なんかきたぞ」。現場にいた誰かが叫んだ。「こんなに早く、嘘だろ」。渡辺さんは眼鏡についた雪を払いながら、遠くを見た。停車してからまだ2時間ほどしかたっていない。DE10は石油列車の最後尾に近付き停車。警笛が2回鳴った。乗車していた職員らが線路に降り、状況を確認、再び警笛が2回鳴り、DE10がさらに接近し、石油列車の後尾に接続された。DD51の運転席と通信しながら、DE10が動き出しのタイミングを合わせていく。立ち往生していたDD51運転士の遠藤文重さんが無線で叫ぶ。「お願いします」
DE10が押す力がタンク貨車から機関車側へ伝わっていく。遠藤さんは再びノッチを入れ、ゆっくりブレーキを解除していく。一瞬甲高い金属音が響いたあと静かに、しかし力強く石油列車が動き始めた。「よし、動いたぞ」。遠藤さんが声を上げた。
「おお、すごい」。現場にいたJOTの渡辺さんらも思わず叫んだ。予想より早く到着した救援機関車。近くで待機していたんだと思うと、胸が熱くなった。再始動した石油列車は何ごともなかったようにカーブの向こうへ消えていった。