「これで『辛口』って言える? なんか足らんと思うんや」。完成間近だった伊勢角屋麦酒と産経デジタルのコラボビール造りは、びん詰めの直前で出口善一ヘッドブルワーからまさかの「待った」が入る緊急事態に。ここにきて妥協を許さない“伊勢角屋イズム”が立ちはだかった。酒豪女子こと記者が青ざめ、目前に出荷が迫る中、「短時間で辛口らしさをもっと出すために」使ったという奥の手とは一体? 最終的に出口ブルワーも「これこれ!」と納得したビールはどんな味に仕上がった?
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完成間近のビールに「待った」 “伊勢角屋イズム”が炸裂
よもやの緊急事態…。できあがったビールの仕上がりに納得がいかない出口ブルワーは、すでにびん詰めを始める時間だというのに、あろうことかここから味を変えると言い始めた。もう予約販売はスタートしているし、出荷も間近に控えているのに…。ここにきて「ナンバーワンかオンリーワンのビールしか認めない」という妥協を許さぬ“伊勢角屋イズム”が立ちはだかった。
出口さん「あと1日待てるか? 『辛口』っぽさを出す秘策がある」
筆者「あわわ…(涙目)」
出口さん「じゃあ最優先で今日中に作業するわ」
出口ブルワーはそう言い残しブルワリーの奥へ引っ込んでしまった。取り残された酒豪女子こと筆者は、「ビールは無事完成するのか」「味が変わりすぎたらどうしよう」と焦りを募らせる一方だ
しかし事態が動いたのは2時間後、意外にも早く進展があった。「『辛口』の表現に悩んだけど、さらにキレを出してみた」と、出口ブルワーは「奥の手」を加えたビールを早速注いでくれた。一見、さっきとなんら変わらないように見えるけど…。