ファンからの注文が殺到し、今では多くのテレビ番組でカネマスのジャージーが採用されている。衣装係の急な注文にも、すぐ対応できる態勢を整えており、業界内での信頼も厚い。これも品質を重視した姿勢が生み出した結果といえる。
◆被災者に寄り添う
その一方で、カネマスは技術開発にも力を入れている。営業を担当していた金子氏だが、30歳を過ぎてから開発にも興味を持ち始めた。何度か失敗したこともあったが、2001年には植物をパウダー状にして染色する技術を開発し、04年に世界9カ国で特許を取得している。
また、東日本大震災で家をなくして避難所で生活する被災者が水がなく、洗濯ができない姿を見て、自分に何かできることはないかと考え、12年から水をはじく生地を使ったジャージーの開発に乗り出した。知り合いの機屋や染色工場の協力を仰ぎ、4年かけて開発した。
水や液体の汚れを寄せつけないジャージーは、画期的なアイデアとして認められ、県の「渋沢栄一ビジネス大賞」ベンチャースピリット部門で大賞を受賞した。金子氏は「まさか大賞をいただけるとは思っていなかった」と笑顔で語る。
取引先から生地について教えてもらい、独学で学んだ開発は「趣味の延長線上だ」と話す金子氏。この我流の開発方法が他の人ができないものを生み出す源泉となっている。「自分の頭の中で考えて難しい課題を解決していく作業が好きで、死ぬまで続けたい」。次の画期的な開発品が待たれる。(黄金崎元)
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【会社概要】カネマス
▽本社=埼玉県羽生市西5-39-3((電)048・561・0635)
▽設立=1953年9月
▽資本金=1500万円
▽従業員=80人
▽売上高=約6億円(2016年度)
▽事業内容=スクールジャージーの製造・販売