「そもそも無謀だったんです」-三重県伊勢市にある「伊勢角屋麦酒」の鈴木成宗社長(49歳)はクラフトビール事業の創業当時をこうふり返る。今でこそ国内外の審査会で賞を総なめにする名門ブルワリーだが、創業から6年間はうだつが上がらず、取り込み詐欺に遭った際はなんと相手から逆説教されたという。「暗黒の時代だった。ドツボにはまった」と回顧する鈴木社長の苦難の過去に迫った。一方、コラボビールを醸造することになった「酒豪女子」こと筆者は、いよいよ仕込みに挑戦してきたぞ!
▼前回の話(2):若者のビール離れは嘘!? 低迷市場でクラフトビールが快進撃、味オンチの記者も醸造に挑戦!
ブーム終焉で「暗黒の時代」 詐欺相手からまさかの逆説教
「二重三重の意味で無謀だったんですよ」。400年以上続く家業の二軒茶屋餅角屋本店(三重県)で専務を務めていた鈴木社長は、1997年春に餅屋の傍らでビール製造業を始めた。当時は地ビールブームの最盛期。全国に地ビールメーカーが次々と誕生しており、伊勢角屋麦酒もそのうちの1社だった。「当時は『餅屋の息子の道楽』としか思われてなかったです。経営経験が浅いにもかかわらず、ビールの醸造業とレストラン業を同時に始めたわけですから」と鈴木社長は当時をふり返る。
ブームもあってかビールを売り出す前からメディア取材が絶えず、話題作りには成功していた。「数カ月間はものすごい多くの人がビールを買いに来てくれました。創業した年の夏のイベントに出店したときは朝から晩まで行列ができ、『こんなにビールが売れるとは…』と思った記憶があります。でも、すでに危険な状態は分かっていました。完全なブームでしかない、と」(鈴木社長)。