シャープ技術の引力
新設工場の総投資額は日本円にして1兆円相当とされ、主に鴻海グループの投資会社が負担する。この投資会社は郭氏個人の所有で、鴻海の大規模で迅速な投資判断を支えているとみられている。
今回の計画では広州市も補助金の形で資金を負担。詳細は明らかにされていないが、中国では地方政府が工場誘致を競い合っており、相当な額に上るとみられている。
背景にあるのは、製造業の競争力強化を図る政策「中国製造(メード・イン・チャイナ)2025」だ。労働人口減少と人件費高騰で「世界の工場」としての成長に限界が見えてきたことから策定された。
政府は産業を高度化するための投資を加速させる考え。補助金目当てに「本当に製造技術があるのか、疑わしい計画もある」(業界関係者)が、鴻海とシャープには実績がある。金融機関が群がるように集まり資金を用立てたという。
量ではない、質の問題だ
中国は今、ディスプレー工場計画ラッシュの様相を呈している。いずれ生産過剰になり収益は低下するとの指摘もあるが、郭氏は意に介さない。
「量の問題ではない、質の問題だ。全世界で高品質な携帯電話は過剰とは言われないだろう? シャープの(ディスプレー)パネルは全世界で一番の品質だ」