郭氏は孫氏と親交が深く、鴻海によるシャープ買収にあたっては、相談を受けた孫氏が銀行トップを紹介するなどして橋渡しの役を務めた。ソフトバンクは先日、シンガポールに拠点をおく投資会社を鴻海との合弁に切り替えると発表するなど、ビジネスの関係も密だ。
鴻海は3月1日、東芝が分社化する半導体メモリー事業について、出資や買収へ関心があることを表明した。郭氏は記者団に「東芝の経営を助け、資金をつぎ込める」と胸を張った。アップルに供給している東芝の半導体メモリー事業を飲み込めば、アイフォーンのサプライヤーとしての地位を一層強固にできる狙いがある。
郭氏と東芝、半導体。ここでも孫氏とソフトバンクの存在が見え隠れする。ソフトバンクは昨年9月、英半導体開発大手アーム(ARM)・ホールディングスを3・3兆円で買収。日本企業によるM&A(企業の合併・買収)では過去最大の案件で、世界の度肝を抜いた。孫氏が見据えるのは、モノのインターネット(インターネット・オブ・シングス=IoT)社会の到来だ。孫氏はアームがIoT向けのチップ約1兆個を今後20年間に供給するとの見方を示しており、半導体業界を制することがソフトバンクの成長に欠かせないとみている。
実は、東芝社内や産業界、経産省にも孫氏の満を持しての「登場」を待望する声が出ている。東芝に近い関係者は「孫さんがアーム買収の勢いで手を挙げてくれないだろうか」と真顔でつぶやく。