それ以来、「世界に市場を求め、需要がある所で生産する」という経営理念の下、海外展開を進め、現在の四輪車の生産は18カ国・地域、35拠点に上る。2003年には日本や北米、欧州、中国など世界の主要6地域が独自に生産・開発を進める「6極体制」を敷き、北米で人気のスポーツ用多目的車(SUV)「パイロット」など、地域専用車を迅速に供給する体制を確立した。
しかし、創業期からの理念がいま揺らいでいる。
「供給能力が過剰になり、収益に影響を及ぼした反省がある」。昨年7月6日、社長就任後初の記者会見で、八郷隆弘はこう述べ、6極体制の運用を見直す方針を示した。
前社長の伊東孝紳は世界販売600万台を目指したが、拡大路線が裏目に出て、生産能力が余る状態に陥った。17年3月期の世界販売の計画は前期比5.0%増の498万台と好調で、生産能力(555万台)に迫るが、市場が停滞する欧州や日本は依然として能力が大きく需要を上回る。