川口社長就任後1期目の16年5月期決算、同社はそれまでの経理処理を正し、約1億円の営業赤字を計上。これまでの不適切な会計処理や、実質的に債務超過である点を金融機関や主要取引先に説明し、今後の支援を求めた。だが、14億円近くに膨らんだ借入負担は重く、金融機関への支援要請も実らず、資金繰りに行き詰まった。
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【会社概要】藤崎金属
▽本社=東京都墨田区
▽設立=1969年1月
▽資本金=5000万円
▽負債額=17億7415万円
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〈チェックポイント〉
高齢化社会は企業経営の現場でも深刻な問題で、事業承継がクローズアップされている。スムーズな世代交代が進まない背景には、経営悪化や個人保証の問題を抱え、事業承継をしたくてもできない企業が多いこともある。
社長交代を発端に倒産に至った同社のケースも、根本的にはこれに該当するだろう。経営者保証のガイドラインなど事業承継を推し進める施策はあるが、中小企業では代表個人が経営のすべてを背負わざるを得ないのが実情だ。結果、ガバナンス不足から不適切な会計などで会社の延命を図る土壌も生まれやすい。
M&A(企業の合併・買収)が市民権を得て、事業承継の選択肢は以前より増えているが、余力のあるうちに廃業を決断することも選択肢になってくる。後継者や社員にどう会社を引き継ぐか。最後に難しいかじ取りが待ち受けていることを経営者は知るべきだ。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)