非鉄金属専門商社の老舗、藤崎金属が10月24日、東京地裁から破産開始決定を受けた。
同社は先々代社長(現社長の祖父)が合資会社藤崎商会として創業。以来、一貫して伸銅品(銅や銅合金を加工した製品)を取り扱い、時代の変遷に合わせてアルミ製品などにも扱いを広げていた。自動車向け部品やアルミ建材などが順調に伸び、大手製鉄所の指定代理店としての確固たる地位も築いていた。ピークの2007年8月期は売上高49億2424万円をあげ、経営は順風満帆にみえた。
ところが世界経済を混乱に陥れたリーマン・ショックを機に経営環境は一変。主力先の自動車業界は一斉に減産に動き、受注は低迷した。09年8月期の売上高は23億7300万円と前期から半減。その後は円高も進み、顧客の海外移転や海外の安価製品の流入で経営は圧迫されていった。そこに歴史的な円高で、為替デリバティブ取引による損失計上も表面化。08年から13年の6年間で総額1億6000万円の損失が生じた。
売り上げ減少と円高による利益低迷のダブルパンチを受け、経営は悪化の一途をたどった。こうした最中の15年12月、先代社長が急逝した。先代社長は創業者の父の跡を継ぎ、30年近く陣頭指揮をとっており、長女の川口京子社長もまた、長年同社に勤務して先代を支え、先代亡き後に3代目社長に就任した。
だが、新社長に就任後すぐに決算に不適切な会計処理が行われていたことが発覚した。これまでの決算は辛うじて黒字を維持していたが、内実は仕入決済の一部を翌期に繰り越して確保してきたものだった。また、バランスシート上での商品在庫は毎期約6億円が計上されており、その資産価値は実態とかけ離れ大きく毀損(きそん)していた。