2016.11.5 16:02
シャープの戴正呉社長=8月、堺市堺区(寺口純平撮影)【拡大】
経営再建中のシャープに台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業から社長として送り込まれた戴正呉氏が、刺激的な言動で社員を焚きつけている。頻繁に情報発信するだけでなく、他社との交渉内容を突然表に出すといった掟破りまでやってのけ、側近たちを慌てふためかせた。1日17時間働くとされ「有言実行」を宣言する戴社長。その流儀はシャープ社員にどこまで浸透するか。(石川有紀)
突然の談話発表
「譲渡先と、(旧本社隣接の)田辺ビルを改めて取得する方向で一致した」
戴社長は就任から1カ月過ぎた9月21日、2度目となる社員向けメッセージの中で突然発表した。
経営再建の資金をやりくりするため、外部に売却された旧本社ビルと田辺ビル。旧本社ビルの買い戻し交渉は不調だったが、田辺ビルは研究開発拠点として活用する方向だ。
A4用紙4枚にわたるメッセージには戴社長の執念がにじみ出ていた。伏線は、鴻海とシャープの買収契約を発表した4月の記者会見にある。
戴社長はシャープ「第2の創業の地」である旧本社を買い戻したい、と発言した。しかし翌日の一部報道では「冗談交じりに」と片付けられたのだ。
これに対し戴社長は社員向けメッセージで「シャープが業績予想の下方修正を繰り返すなど信頼を裏切ってきたため」と分析。悔しさをにじませつつ「有言実行」へ決意を新たにしたと記し、社員にも事業目標の達成を強く求めた。
激動の社長室
メッセージ発表に慌てたのは、社長直轄で秘書や広報、渉外などを務める社長室の担当者たちだ。不動産の取得は財務、資産内容に影響するため「社員にだけ開示してはインサイダー情報になってしまう」(関係者)。東京証券取引所への適時開示発表文や報道向け発表文の作成に追われた。