この解決策に欧州各国で共有化される新戦略が「電化」の加速化と「脱内燃機関」を手繰り寄せることである。VWは2025年までにグループ販売合計の20~25%を電動車両に置き換える考えだ。戦略の切り札は、「MEB」と銘打ったEV専用プラットフォームである。高効率で低コストのEV開発を先導し、競争優位性を構築する考えである。ルノーは、日産自動車-三菱自動車の資本提携をグループ戦略に取り込むことで、一段と電化戦略に弾みをつけると考えられる。
今年9月、スズキの鈴木修会長は、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長を訪ね、トヨタとスズキの歴史的な提携交渉の開始にこぎ着けた。故郷を共有する日本企業が手を握り合い、自動車産業の国家間競争を勝ち抜ける姿とは一体どのようなものか。国内自動車産業を牽引(けんいん)してきた2人の卓越した老経営者は、あるべき布陣の方向性を示したといえるだろう。
両社が目指すものは、まさに国家間競争を生き抜く「仲間づくり」である。日本の自動車産業の強みとは、アジア地域を中心とする「ものづくり」やハイブリッド化にある。トヨタ・スズキ連合は、内燃機関の競争力を高め延命化を果たすだけでなく、次の100年の産業発展を支え、欧米メーカーに対抗する非常に強い関係となりえるだろう。自動車産業は国家の経済と雇用の要である。この戦いは、どの国も負けることが許されないのである。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。