入居率90%超 テーマ設定し利便性向上 進和建設工業・西田芳明社長


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 人口減少時代のなか、入居率90%を超える賃貸マンションの建設で注目を集めている企業がある。進和建設工業(堺市北区)は、コストを下げながら品質を上げることに成功し、さらに1人暮らしの女性向け、子育て世帯向けなどテーマを設定し、あえて入居者を絞るユニークな手法もいち早く提案した。コスト削減といえば、下請け企業に安値での受注を迫る「下請けいじめ」が問題化する中、会社、社員、顧客がともに満足する「三方よし」のビジネスを心掛けている。

 --経営者としての信条のようなものは

 「10代のとき、父親が経営していた会社が倒産した。それまでの裕福な生活が、一転した。強かった父親が弱々しくなり、社員は辞めていった。家族と離ればなれに暮らすこともあった。それがつらかったので、家族や社員、顧客を物心両面で幸せにする『三方よし』の経営を心掛けてきた」

 --賃貸マンションの建設を手掛けるようになったきっかけは

 「(倒産後、父親が新たに設立した会社の)2代目として社長を継いだとき、30代という年齢のせいか、依頼元から信頼されず、公共事業の仕事が回ってこなくなった。そこで大手ハウスメーカーと取引を始めたが、利益が少なく、納期が厳しく大変だった。必死に働いたのに、会社ももうからず、社員の給料も上がらなかった。これではだめだと思い、手を引いた」

 --賃貸マンションのコストをどう抑えているのか

 「コストを下げるにあたり、下請け企業への発注価格を減額することはしなかった。マニュアルを作るなどして作業の効率化を図り、設計を標準化して打ち合わせなどの時間を短縮したり、資材をメーカーから直接買い付け、コストを相場より2割下げ、品質を1割上げた。顧客が顧客を紹介する形で、案件が次々と舞い込むようになった」

 --特徴を持たせた物件を展開している

 「『化学物質を使わないマンション』『一人暮らしの働く女性向けのマンション』など、テーマを設定したマンションの提案も始めた。入居者を絞ることに抵抗のあるオーナーもいたが、利便性が評判となった。現在は、サービス付き高齢者用住宅や集合住宅の建て替えなど、時代に合った事業を展開している」

 --建設業界の展望をどうみる

 「現在は東京五輪などに関連した建設ラッシュが起きているが、2018年がピークと予想している。100年企業という目標に向けて、次の一手を打ってこの波を乗り越えたい。22年に、現在の売り上げ(38億円)の約2.5倍にあたる売り上げ100億円を目指している」(栗井裕美子)

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【プロフィル】西田芳明

 にしだ・よしあき 1987年、2代目社長に就任した。一級建築士。著作に「行列ができるマンション経営」(しののめ出版)「トップは志(ひと)をつくりなさい」(現代書林)などがある。堺市出身。

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【会社情報】進和建設工業

 ▽本社=堺市北区百舌鳥梅町1-30-1

 ▽設立=1968年12月

 ▽資本金=5000万円

 ▽従業員=51人

 ▽事業内容=賃貸マンションの設計・施工、不動産のコンサルタントなど