英国のEU離脱決定を受け、世界最大の保険市場である英ロイズ系の再保険会社を買収してきた日本の損害保険大手各社が、「ロイズ弱体化」に警戒心を強めている。円高ポンド安で英子会社からの利益が目減りすれば、連結業績に悪影響が及ぶ恐れがあり、各社は慎重に影響を見極める。
「中長期的にはロイズの相対的な価値が低下し、世界中の保険会社がロイズに持ち込む(再保険)案件が減ることも考えられる」
東京海上日動火災保険の北沢利文社長は30日、日本損害保険協会会長の就任会見でこう懸念した。
東京海上は平成20年、英大手保険グループのキルンを約1千億円で買収。円高ポンド安が長引くと円換算収益が減ってしまう。ただ、北沢氏は「保険料全体のうち英国は3%程度のため、大きな影響はないだろう」との認識を示した。
損害保険ジャパン日本興亜は26年に英キャノピアス(現SOMPOキャノピアス)を約1千億円で買収したほか、三井住友海上火災保険も今年2月に英アムリン(現MSアムリン)を5900億円で買収するなど、日本の損保大手によるロイズ有力メンバー買収が相次ぐ。
再保険は「保険会社の保険」と呼ばれ、保険会社が再保険料を支払ってリスクの一部を再保険会社に移す仕組み。ポンド安で再保険の補償限度額が相対的に低くなる恐れもある。
一方、東京海上は欧州事業の統括現地法人の本社を英ロンドンに置く。これまで英当局の認可を受ければEU域内で自由に営業できたが、英国の離脱後はEUで営業できなくなる可能性もある。北沢氏は「欧州大陸側に営業人員をシフトする必要があるかもしれない」と語った。