その後も精華大学や北京大学に呼ばれて話すとき、私が彼らに問いかけているのは、「なぜ、ベンチャーを目指したいの」です。「目的は何ですか? 社長として生きることが格好いいと思うからですか? お金持ちになれると思うからですか?」と。
◆たった一回の人生
起業は、本当に大きなリスクをとってでもチャレンジする覚悟がないとやってはいけません。こんな目に遭うのだったら、やっぱりやめたというのは許されることではない。浮ついた気持ちで真剣勝負しているビジネスの世界へ入ってきてはいけません。なんのために起業するのか、自分の魂にしっかりと対話をして、自分は人生を懸けて、この使命のために、こういう仕事をやるぞという覚悟があるのなら、言ってください。そのときは、私は残りの人生、自分の体力、気力、時間を惜しみなく、皆さんのために使うことをしましょう、と話しています。
日本と中国は不幸な過去がありました。それぞれの歴史観、民族観があり、それを自覚し、反省することは大切です。でも、なかなか正解にたどり着けないまま、戦後70年もの歳月が流れていきました。私は9歳で戦災に遭い、街が一夜で灰になる中、私も一度死に、奇跡的に生き返る体験をし、私を殺そうとした「鬼畜米英」を憎み、大人になってアメリカに行きました。そこで出会い、体験して知った鬼畜たちは皆すばらしい人たちでした。私の新しい人生はそこから始まりました。
たった一回しかない奇跡のような貴重な人生ですから、この時代にともに生まれた意味と使命を考え直してみたい、そして新しい時代をともにつくっていけたら、こんなすばらしいことはないと思います。(聞き手 廣瀬千秋)