【トップの素顔】今野由梨　ダイヤル・サービス社長（１６） (2/2ページ)

　それでは、私の気持ちが治まりません。「これから会社を興すのに責任逃れのままでは、起業する資格はありません。迷惑をかけた商品代など何年かけてもお返しします」と引かない私に困ったやつだという顔付きをされながらも、私が起業することに興味を示してくれたのです。

　◆自らビジネス体験を

　ちゃんとしたビジネスの経験をしたことがないだろうから、いろんな人を紹介してあげるといわれ、後日、呼ばれた場所に行ってみたら、高島屋や日産建設（現・りんかい日産建設）のトップの方々がおられました。みなさん、怖い顔して「どんな小さな仕事でも、会社を始める、経営者になるということには大きな責任が伴うものだ。『あら、ごめんなさい』では済まない。社員には家族がいる、取引先も生活がかかっている、そういうことを分かった上で会社を創らないとダメだ。聞いたからには生半可な気持ちでは創業を許さない」と、真顔で説教される始末です。

　「創業までの残る時間だけでも、仕事がどんな厳しいことなのか体験しなさい。会社を創るのはそれからだ」と。そんなこと見知らぬおじさん方から言われる筋合いでもないけれど、「一番厳しい仕事ってなんでしょうか」と聞いたら、こう告げられました。「セールスをやりなさい。それも一番売れない商品を売れない人に売ってみなさい」（聞き手　廣瀬千秋）