それによる社会的事業の長期的育成は13年6月の主要8カ国(G8)首脳会議でのキャメロン英首相の呼び掛けに応じ、各国でタスクフォースが発足して以降、世界的な潮流になりつつある。日本でも芽生え始めた、事業収入型の非営利組織や社会的起業を後押しする資金の出所を政策的に用意していく必要がある。
第3に、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)について。SIBは、国や自治体が実施していない事業であって社会的コストの低減が見込まれるものを、民間からの資金調達によって賄い、行政がその成果に対する対価を支払う社会的インパクト投資モデルをいう。あらかじめ合意された社会的インパクトが達成されると行政コストが削減され、場合によっては税収増も期待できる。
資金提供者は成功した場合に限り、元本と改善された行政収支の一部を成果報酬として受け取る。諸外国では、再犯予防や生活保護などの分野で20件以上のSIBがある。
日本では今年4月、神奈川県横須賀市が日本財団の協力を得てSIBパイロット事業を開始した。民間資金を元手として、特別養子縁組推進事業を民間非営利団体(NPO)が実施。社会援護が必要な子供たちに家庭環境を提供し、増え続ける児童養護コストを抑える。
この事業では、自治体から資金提供者への成果報酬は発生しないが、結果次第で来年度以降、本格展開の可能性がある。財源として休眠預金が組み込まれれば、より多くの資金が集まるだろう。地方創生策として活用することもできる。
最後にもう一つ。マイナンバー導入に伴う記録開示システムが金融機関にも一部開放される見通しだ。17年1月からの活用に向けた検討がなされている。これが進むと、休眠預金の発生や保険金不払いの抑止、金融機関の事務負担軽減なども見込める。他方、これにより財源としての休眠預金の規模が減る可能性がある。