そのとき、生ごみのエネルギー化に取り組む東京農業大の研究室がテレビで紹介された。以前から代替エネルギーに興味を抱いていたため、オープンキャンパスに参加。教授からの薦めもあり入学を決めた。
環境コンサルティング会社でアルバイトをしながら大学に通い出産も経験。3年次から研究室に通い廃棄野菜のエタノール化などを研究していた。そのとき、岩手県奥州市の農家から東農大に「コメをエタノールにしたい」という話が舞い込んだ。コメの消費量低下に危機感を抱き、新たな活用法を模索していたのだ。
奥州市は2010年度から、コメからエタノールを作る地域循環実証プロジェクトを開始。この計画に酒井社長が、技術指導などの形で参画する。期間は3年間。プロジェクトの予算は少なく、知り合いの中小企業に装置の製作を依頼するなどして対応した。
◆燃料の代替模索
当初は地球温暖化対策の一環として、燃料の代替を模索していた。しかし、とても採算に合わないことが判明。必死で他の用途を探していたところ、オーガニック化粧品に潜在需要があることが分かった。由来が分かる高級素材が求められていたからだ。これを踏まえ、洗顔用せっけんを開発。肌のしっとり感などで高い評価を受けた。
13年度からは奥州市から引き継ぐ形でファーメンステーションが事業を本格展開。化粧品原料として販売するなど、事業の多様化も順次進めている。こうした取り組みが認められ、日本政策投資銀行の「第3回 女性新ビジネスプランコンペティション」では、特別賞に相当する「地域イノベーション賞」を受賞した。