その後、材料の改良で対応するようになり、いったん出番を失ったものの、同社の基礎研究を担う先端研究本部の美濃規央(みの・のりひさ)主幹研究員が粘り強く地道に研究を続け、応用可能性を探ってきた。
美濃氏は、この技術が農業に役立てられると考え、京大大学院農学研究科に相談。「雨水を保持できるだけでなく、塩害防止にも役立つのでは」とアドバイスをもらい、2010年に試験農園で農作物の栽培実験を始めた。
この試験農園は、土の中に傾斜のある撥水砂の層を設け、その上に配水管を通してある。傾斜をつけたのは、撥水層がせき止めた水をタンクで回収し、栽培に再利用するためだ。この仕組みを適用すれば、乾燥地帯でも、塩害を防ぎつつ、わずかな雨量で栽培できる。
しかも、回収した水は肥料を含んでいるため、「肥料の節約や収穫量の増加も期待でき、肥料の排出による環境悪化まで防止できる」(美濃氏)という。昨年行ったトマト栽培では、収穫量が40%ほど増えたという。