伊藤忠商事による今回のタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの資本業務提携は、「非資源ナンバーワン商社」の地位を盤石とし、大手商社トップの三菱商事、2位の三井物産を追撃するのろしと受け取ってよさそうだ。
大手商社は石炭など資源価格が低迷する中で、資源への投資を抑え、安定収益に貢献する食料や化学品など非資源分野の強化を打ち出している。
中でも伊藤忠は食料や繊維、化学品など非資源分野が全社の最終利益の約8割を稼ぐ屋台骨だ。今年に入り、経営破綻したジーンズ国内大手のエドウインを傘下に入れ、平成24年には米食品大手ドール・フード・カンパニーのアジアの青果物事業の一部を買収するなど積極投資を進めてきた。
実際に平成26年度の最終利益見通しは、非資源分野だけを比較すると2410億円と首位の三菱商事の2240億円を超え、名実ともに非資源ナンバーワンを手中にする勢い。23年度決算の全体の最終利益では住友商事を抜き業界3位を奪還し上位2社を射程にとらえた。
伊藤忠は昭和47年の日中国交正常化の前から中国市場を開拓するなど、中国に強いイメージが定着している。アジアでの資本・業務提携では、中国の食品・流通最大手の頂新グループや複合企業グループの杉杉集団など中国市場に軸足を置いてきた。ただ、今回のタイ財閥との提携は中国市場開拓も視野に入れているものの、急成長する東南アジア諸国連合(ASEAN)などアジアシフトを鮮明にした格好だ。